-

ベイカレント解剖、圧倒的成長を実現する事業モデルと競争力の源泉

国内のコンサルティング業界において、圧倒的な成長を実現しているベイカレント。

2025年3月には日経平均銘柄に選出されるなど、SNSだけでなく公式ニュースにも姿を現すことが増えてきたように思います。

従業員数は約6,000名、売上は1,000億円を超えており、すでに国内コンサルティングファーム随一の規模となっています。

コンサル業界にいながらもその実態があまり見えておらず、その強さの秘訣はどこにあるのか?調査してみました。

目次

直近4年で売上2倍、FY2025には1160億円の売上を達成

ベイカレントはFY22の売上が577億円であったのに対して、FY25は1160億円に達しており、わずか4年で売上を倍増させるという驚異的な拡大を記録しています。

CAGR(年平均成長率)は25%と、国内コンサルティング業界の平均成長率:約10%を大幅に上回る水準となっています。

営業利益を見てみると、FY22:215億、FY25:420億と、これまた2x成長を実現しており、採算度外でトップライン拡大を追求しているのではなく、地に足の着いたサステナブルな成長曲線を描いていることが分かります。

営業利益率は直近2年は36-37%程度あたりを維持しており、これは競合他社と比較しても突出した水準となっています(NRIこと、野村総合研究所の直近の営利率は18%)

さらに特筆すべきは1人あたり生産性の高さです。

1人あたり売上はFY16:1440万円/FY26:2110万円、1人あたり営業利益はFY16:245万円/FY26:780万円と、単なる人員増強ではなく、従業員一人ひとりの付加価値を底上げすることに成功していると言えます。

こうした異次元の成長と収益性を支える強さの秘訣はどこにあるのでしょうか?

高級人材派遣という特異な事業モデル

ベイカレントの事業モデルは高級人材を人手不足の企業に送り込む高級人材派遣が主軸となっています。

定例Mtgをマイルストンにしながら調査・検討↔ディスカッションを繰り返すワークスタイルではなく、クライアント先で社員の方と事業をとにかく前進させる実働部隊として機能しており、基本的にはクライアント先の常駐がメイン。

最近では準委任契約ではなく、派遣契約を締結しながら、クライアント内部の情報にも自由にアクセスしながら一社員としてワークするプロジェクトが徐々に増えているようです。

これによってクライアントの事業推進にあたって必要不可欠なピースとなり、継続受注・高稼働率に繋げているというからくりが垣間見えます。

補足:コンサルティングサービスは準委任契約が原則
  • 請負契約:業務を通じた結果が契約の目的であり、請負人は成果物を完成させる義務を負う(システム導入コンサルなどに多い)
  • 準委任契約:一定の成果ではなく、誠実に業務を遂行することそのものを委託しており、成果物の完成は目的としていない(多くのコンサルティングはこちらの契約)
  • 派遣契約:派遣元企業が雇用する労働者を、派遣先企業の指揮命令のもとで働かせる契約(派遣先による直接的な業務指示が可能)

そうした背景もあり、KPIとして「コンサルタント数」と「稼働率」がトラックされており、決算報告でもこれらに関して重点フォローされています。

コンサルタント数についても20年度:1,839名、22年度:2,638名、25年度:5,467名と、うなぎのぼりの拡大を見せており、事業拡大を支える要因となっています。

しかし、どれほど多くの人材を抱えていても、案件プールががなければ事業拡大はありえないわけです。

また、コンサルタントとして十分に機能する優秀な人材でなければ、高額なフィーを正当化することはできません。

これらのハードルをどのように乗り越え、飛躍的な成長を実現しているのでしょうか?

“稼ぐ者が偉い”カルチャーを作る最強の営業部隊

ベイカレントの成長エンジンの中核を担うのがBusiness Producerという営業専門部隊です。

この部門が案件獲得の責任を負い、コンサルタントは目の前のプロジェクトに集中できる体制となっています。

営業部門はコンサルティングサービス提供を担う部署とは切り離されているものの、単純な営業業務のみならず、コンサルタントの採用やプロジェクトのアサイン管理にも関与しています。

採用に関しては現場コンサルタントは関与せず、基本的には営業部門と人事部門が全て掌握しているという点も、他のコンサルティングファームと比較すると非常に特徴的なところかと思います。

そのため、「どのパートナーにつくか?」ではなく、「どの営業につくか?」が今後のプロジェクトテーマやキャリアの色を決めると言われるほど、社内的にプレゼンスの大きい組織となっているようです。

ここで疑問になるのは、クライアントが直面する課題を解決するコンサルティングプロジェクトをなぜ営業が受注できるのか?というところです。

コンサルファームの提案書は30ページ以上にわたるようなスライドを1パッケージとして、初期仮説の鋭さとそれを検証するプロジェクトアプローチで勝負を決めに行く要素が一般的に強いためです。

これを可能にしているのは、はたまたその事業モデルの特異性に行き着き、クライアント先の人材需要に対して人材をピンポイントで売り込むという性質が強いため、営業担当の営業力・クライアントとの間合いでほぼコンペになることなく案件を獲得できるのです。

こうした事業モデルのため、社内では営業担当がコンサルタントよりも格上ポジションにあると言われており、報酬水準も以下との噂があります。

  • マネージャークラス:1500-2000万円
  • シニアマネージャークラス:2000-2800万円
  • パートナークラス:3000万+α

これが真実であれば、単純なコンサルタントの年収を上回っていると想定され、”稼ぐ者が偉い”という営業会社のカルチャーそのものとなっていると言えます。

ブランディングによる優秀人材の囲い込み

ベイカレントはインダストリ×ソリューションカットの縦横組織ではなく、組織の垣根のないワンプール制を採用していることで有名です。

「コンサルティングファームで幅広い案件を経験できる」という武器をフックにし、中途採用界隈では有象無象の転職エージェントが求職者のリードを獲得することに必死です(私個人の経験としても、コンサル非公開・限定求人という名目のスカウトの中身を開けばベイカレントということがよくありました)

ただ、それだけで本当に優秀な人材を引き付けられるでしょうか?

2025年春の新卒採用人数を見ると、ベイカレントは合計466名の新卒を採用しており、約半数が早慶上理、最大派閥の早稲田は100名以上とのことで、かつてのメガバンクをほうふつとさせるほど優秀な人材の採用に成功しています。

この背景には、ベイカレントによる巧みなブランディングがあります。

応募者目線での魅力としては、、、

  • ITセントリックな営業会社ではなく、ロジック&インサイトで勝負するコンサルティング会社
  • 業界・領域関係なく、興味関心やスキルフィットに応じて戦略~実行まで幅広く経験できるチャンス
  • BIG4同等以上の高給企業として、若手から高い報酬を提示。特に優秀な人材は積極的にプロモーション
  • 今をときめく麻布台ヒルズにオフィスを構え、受付の美女とルックスの良いプロフェッショナル集団

といったポイントが挙げられ、「営業×高級人材派遣」のモデルの印象とは異なる戦略的なブランディングによって優秀な人材を囲い込み、事業のスケールを実現しているように見えます。

SNSでは「こうした事業モデルで成長できるのか?」といった声もよく聞こえてくるところですが、高額なフィーを正当化するために自己研鑽と迅速なキャッチアップが必要であり、大手JTCにも決して劣らない成長機会があると言えると思います。

また、その質の高さを裏付けるように、選考ハードルは非常に高い水準となっています。

内定率は10%(1000エントリで100人オファー)とされ、さらに書類選考と一次面接で半数ずつが不合格となる狭き門のようです。

Youtube「コンサルへ行こう! (転職 | 就活)」チャンネルさん

面接では「コミュニケーション、スキル、マインド、見た目」の4項目を総合的に評価しており、一定ハードルのあるスクリーニングによって人材の質を担保しています。

今後の事業拡大の目線感

ベイカレントは売上・利益ともにCAGR: 20%を維持し、2029年度までに2,500億円の売上を達成する目標を掲げています。

これを成功させる一手として、これまでのクライアント数の拡大・コンサルタント数の拡大に加えて、単価引き上げという新たな路線に乗り出そうとしているようです。

ダイヤモンド・オンラインでは、ベイカレントのタイトルごとの人月単価が公開されてましたが、その戦略意図は全クライアントでチャージ金額を一律化することで実質的な値上げを図るというものです。

売上1000億円から2500億円へのジャンプはこれまでとは異なる成長ステージに突入することを意味しており、価格競争力を強みとしてきたベイカレントにとっては、一部の顧客離れを招くリスクも考えられます。

近年、ベイカレントと同様のビジネスモデルで急成長するベイカレクローンの台頭も無視できません。

こうした競争環境の中で、これまでの成長軌道を維持できるか?それとも成長の踊り場を迎えることになるのか?今後の動向に注目です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次