かつては選ばれし者だけが辿り着ける世界とされた総合商社ですが、近年は各社中途採用を強化してきており、そのハードルが着実に下がりつつあります。
とはいえ、資源バブル×円安の追い風で空前絶後の業績を記録しており、非常に高給で人気を誇る業界です。一筋縄では入れないというのも実態としてあります。
特に面接は非常に短時間で、質問内容もジェネラルなため、少しでも評価を下げるポイントがあれば光のごとく落選してしまうシビアな世界です…
そのため、前提として業界理解や最新のトレンド、応募企業の立ち位置等を深く捉えておくことが必要です。
面接ではそれを直接話す機会がなかったとしても、土台となる理解の深さは受け答えの端々に表れるものです。
そこで、本記事では、商社業界の理解を深めるために有益な書籍について紹介していきます!
新・現代総合商社論: 三菱商事・ビジネスの創造と革新[2]
三菱商事の役員クラスの方が書き下ろし、早稲田大学の講義で扱われたものが書籍化したものです。
大学生向けのため非常に分かりやすく、事業セグメントごとに何を目指してどのような事業を展開しているのかがインプットできます。
五大総合商社の純利益の推移が掲載されていますが、90年代くらいから解説が載っており、役員クラスの視点を感じられます。
そこでは、商社冬の時代が叫ばれながらも、グローバル化/BRICsを背景とする資源価格の高騰があり、1000億円の大台に乗った2000年代前半がハイライトされてます。商社の面接官はおっちゃん中心のため、そうした転換点も押さえられていると面接でも強いと思います。
専ら三菱商事ネタが多く、会社の思想や歴史の理解も深まるため、特に三菱商事志望の方にはオススメです。
九十九商会という海運会社誕生後、事業領域が拡大していった歴史が読み取れますが、強すぎる三菱財閥の源流を垣間見ることができます…(造船部は三菱重工業、営業部は三菱商事、銀行部は三菱UFJ銀行、地所部は三菱地所、等と発展していった)
やや内容に古さはありますが、多くの商社パーソンが目を通しており、OB訪問でも現役社員からオススメされることが多いとの噂通り、中身も面白かったです!
図解入門業界研究 最新総合商社の動向とカラクリがよ~くわかる本
本屋でよく見る定番書籍ですね、就活で手に取られたことのある方も多いのではないでしょうか。
特徴としては、丸紅経済研究所が発行しているという点にあります(丸紅グループのシンクタンクとして、社内外問わずアドバイザリサービスを提供している組織です)
業界に精通している同社が出版しているだけあり、総合商社の歴史や機能、各社の違いや求める人材像等が幅広くまとまっている書籍です。産業領域別のビジネスモデルと課題、今後の展望まで踏み込まれており、さくっと分かりやすく理解が深められる本だと思います!
特に近年各社が注力しているモビリティやヘルスケア、再エネ/新エネ領域の動向もキャプチャーできます。
伊藤忠 財閥系を超えた最強商人
一時本屋で山積みになっており、興味本位で読んでみたものですが、こちらも業界&伊藤忠研究として非常に有益だと思います!
何より読み物として非常に面白いため、就職/転職活動関係なく、楽しく読めますので万人にオススメです。
繊維商社から総合商社に飛躍するための「社運を賭けた資源開発」や、米ビッグスリーとの提携交渉を通じた「自動車ビジネスへの参入」など、当時のトップがどういった心境で事業を作り上げてきたか、緊迫感ある形で描かれています。
先を行く三菱商事/三井物産の動向を踏まえて自社はどういうポジショニングを取るべきかを常に考えられてきたことが分かり、そうした経営スタイルがいまの伊藤忠の独自性に繋がっているのだなーと感じられます。
伊藤忠を受けられる方はこの書籍とセットで、2025年1月に連載された岡藤会長の「私の履歴書」を読めば、志望度爆上げ間違いなしだと思います!
総合商社とはなにか
現役商社マンの方のオススメ書籍です!
著者のメッセージは、「若者はぜひ総合商社を目指すべし!」のため、メーカーや小売企業等との差分を踏まえた総合商社の優位性が訴求されています。
「総合商社はビジネス創造企業である」という面接官ウケしやすそうな触れ込みが、具体的な事例を引用しながら説明されています。就職/転職活動に活かしやすそうだなという印象を受けました。
近年は、商社の資産入替が活発化しており、ファンド化しつつあるという見方もあるため、ファンドにはない商社の優位性は何なのか?といった点についても解像度が上がると思います。
社員一人一人がどういった働き方をしているか?についてはスコープ外のため、この辺りは地道に社員の生の声を拾っていく必要がありますが、経営視点での商社理解を深めるという観点では良書だと思います!
番外編:総合商社のビジネスモデルの研究
最後に番外編ですが、三菱商事の事業部長が執筆された論文が非常に有益だったため、紹介しておきます!
CiNii Researchより、「総合商社のビジネスモデルの研究」と検索すれば、博士論文がヒットすると思います。
私の転職活動当時は、「総合商社のビジネスモデルの考察及び戦略的進化の可能性に関する研究」(2017年)のみだったのですが、久々に見てみたところ「総合商社のビジネスモデルの研究」(2022年)に進化しており、内容もはるかにパワーアップしたものになってました!
こちらの論文レポートに出会ったのは、「商社の強みって何なのか?」という問いに頭を悩ませていた時でした。
上記の書籍の中にも、「物流機能、金融機能、投資機能等、時代変化に合わせて色んな機能を具備してきた」といったことは書かれているものの、それがビジネス上の優位性なのか?自分の中でいまいち腹落ちしていない感覚がありました。
それに対して、こちらのレポートでは、商社の強みは「オーガナイザー機能」だと説明しています。
「企業集団の中で、企業グループ内の取り纏め役としての商社の役割である。幹事会社としてプロジェクトに参加し、参加 企業を取り纏める役割を果たす」とあります。
事業を構想して、色んな企業に投資/提携しながらオペレーションを構築していくのが商社の事業モデルですが、その機能が端的に表現されており、ものすごくスッキリしたことを覚えています!
その他の内容も、アカデミックな視点で客観的な分析がなされており、体系的に商社業界を理解するにはもってこいだと思います。
2024年に書籍も出版されているようですね。更に深掘りしたい方は手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、商社業界研究のおすすめ本のご紹介でした。
上記書籍が商社への就職/転職を目指す方のご参考になれば嬉しいです!